【こんな夜中に、あっちこっち振り回されて、マジでイライラするぜ!なんでこんな不運なんだ、あんな偏屈な癌患者を治療することになるなんて!あいつがいなければ、今頃は家で寝てるはずなのに!最近ついてないな、帰ったら絶対に厄払いしないと!】
杉本瑠璃の視線が二人の医師のうちの一人に落ちると、彼の心からこのような言葉が読み取れた。
この人物は飛び降りた患者の主治医だろう。どうやらこの件は彼とは関係なさそうだ。
しかし医者として、自分の患者が飛び降りたというのに、彼はそれを不吉なことだと考えているだけで、最低限の医の倫理は失われている。
視線を移し、二人目の医師に目を向けると、その医師の心には何も思いが浮かんでいないようだった。
杉本瑠璃は彼を見て尋ねた。「先生、患者さんが飛び降りた時、あなたは何をしていたのですか?あなたも彼の主治医ですか?」