「実を言うと、今日ここに来たのは、確かに伊藤様にお願いしたいことがあるからです」
杉本瑠璃は手の中の茶碗を置き、真剣な表情で伊藤様を見つめた。
伊藤様は相変わらずの表情で、まるで変わったことがないかのようだった。「言ってみなさい、何の用だ?難しい問題でなければ、わざわざ私を訪ねてくることもなかっただろう」
伊藤様の物事や人を見る目は、非常に鋭いものだった。
杉本瑠璃も率直に言った。「では、率直に申し上げます。水瀬家に手を出したいのです」
杉本瑠璃は瞳を固く、真剣な表情で伊藤様を見つめた。
伊藤様はお茶を飲む手を一瞬止め、顔を上げて杉本瑠璃を見た。彼女の真剣な表情を確認してから、手の中の茶碗を置いた。
「お嬢さん、本気なのか?」
声から判断すると、伊藤様も明らかに真剣さを増していた。