第489章 Y市の風雲人物(49)

「実を言うと、今日ここに来たのは、確かに伊藤様にお願いしたいことがあるからです」

杉本瑠璃は手の中の茶碗を置き、真剣な表情で伊藤様を見つめた。

伊藤様は相変わらずの表情で、まるで変わったことがないかのようだった。「言ってみなさい、何の用だ?難しい問題でなければ、わざわざ私を訪ねてくることもなかっただろう」

伊藤様の物事や人を見る目は、非常に鋭いものだった。

杉本瑠璃も率直に言った。「では、率直に申し上げます。水瀬家に手を出したいのです」

杉本瑠璃は瞳を固く、真剣な表情で伊藤様を見つめた。

伊藤様はお茶を飲む手を一瞬止め、顔を上げて杉本瑠璃を見た。彼女の真剣な表情を確認してから、手の中の茶碗を置いた。

「お嬢さん、本気なのか?」

声から判断すると、伊藤様も明らかに真剣さを増していた。