第495章 Y市の風雲人物(55)

水瀬英明が気絶を装っているのなら、彼女も前に出て「心配」の意を表さなければならない。

杉本瑠璃は人混みを抜けて、水瀬英明の前まで歩いていった。

警察は最初、彼女を止めようとしたが、すぐに杉本瑠璃だと気づき、彼女を制止しなかった。

この先頭に立つ警察官は田中毅の部下で、当然杉本瑠璃を見たことがあった。

さらに田中毅は、杉本瑠璃を見かけたら必ず敬意を払うよう指示していた。

そのため、杉本瑠璃はほとんど妨げられることなく、水瀬英明の前まで歩いていくことができた。

杉本瑠璃はしゃがみ込み、気絶を装う水瀬英明を見て、唇に不気味な笑みを浮かべた。

気絶のふりか?

ふふ、彼女は気絶を装う人が大好きだ!

手首から銀の針を一本取り出し、杉本瑠璃は皆の見ている前で、笑いながら水瀬英明に言った。「水瀬家の若様、もし目を覚まさないなら、この銀針を本当に刺しますよ」