035 矜にして争わず、拾うものは拾う

安藤智秋は中村家では常に影の薄い存在だった。

中村家の本邸にはめったに来ず、物静かで上品、文人としての誇りが強かった。

中村家ではほとんど存在感がなかった。

中村修はこの結婚に満足していなかったため、この婿のことをあまり気にかけていなかったが、気に入った孫娘ができてからは変わった。

安藤智秋が中村修を訪ねたのは、七年前の安藤秀秋の件の時だけだった。

これほど長い年月の中で、初めて中村家でこのような話し方をした。

中村修でさえ、彼の態度に大変驚いていた。

「もういいわ」中村綾香はテーブルの上の煙草を取り出し、一本抜いて火をつけた。「お父さん、実力で負けたことは認めないと。私は彼ら二人を見下げているわけじゃないわ」

中村優香は中村綾香を見上げ、唇を噛んで「お母さん...」