051木村坊ちゃまが人を救いに来る(2)_2

しかし、脳裏に浮かぶ記憶が少しずつ彼女の感情を焼き尽くしていく。平安苑を出た彼女は、地面に座り込んで、静かに空の月を見上げた。漆黒の瞳が冷たい月を映していた。

膝を抱えて、しばらくしてから、やっと携帯を取り出した。

携帯には、さっき食事の席で隠し撮りした写真があった。

安藤蘭の写真だった。

その写真を見つめながら、指先で画面の顔を優しく撫で、そっと囁いた。「お母さん...」

安藤蘭。

彼女の母親にとてもよく似ていた。

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木村浩が戻ってきたところで、木村翼を食事に連れて行くつもりだった。

しかし、車が通りを走っているとき、路肩に白い姿が蹲っているのを見かけた。

「止めろ」彼は突然身を起こした。

車がゆっくりと停止した。

木村浩は向かい側から、窓越しに、無数の灯火を越えて、万里の長河を越えて、静かに白川華怜を見つめていた。まるで初めて出会った時のように、彼女は月を見上げ、彼は静かに彼女を見つめていた。