白鳥春姫は蛇口を開けたが、何も言わなかった。
右手を絶え間なく擦り続けた。
赤くなるまで擦り続けた。
マネージャーは一瞬躊躇してから、仕方なく言った。「あなたの潔癖症、何度も叩かれてるでしょう?直せないの?」
「直せない」白鳥春姫はペーパータオルを取り出して手を拭き、やっとマスクをつけて外に出た。
「同業者ならまだしも」マネージャーは真剣な表情で言った。「渡辺社長は冗談じゃないわよ。草刈社長までも彼を持ち上げているのに、気付いてない?次回はこういうことがないようにして」
白鳥春姫は頷いた。「努力します」
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陽城第一高校では、週末に二回目の月例テストが行われていた。
日曜日の午前中。
最後は理科総合だった。
白川華怜は最後の一文字を書き終えると、ペンを持って試験会場を出た。