073しかし彼女は白川華怜!(2更)

「なな、ヘルメットを姉さんに渡して」伊藤満が後ろに向かって言った。

ななはヘルメットを外し、黒いバイクとヘルメットを白川華怜に投げた。

白川華怜は見もせずに、手を上げてそれを受け取った。

元の持ち主はバイクの運転が得意で、バイクに触れた瞬間、彼女は運転の仕方を理解した。

片手でヘルメットを被り、もう片手でハンドルを握り、長い脚を跨いでバイクに乗った。片足で地面を支え、フロントシールドを下ろす前に、渡辺泉の方を一瞥した。

「心配いらない」

言葉が終わるや否や、彼女はゆっくりと身を屈め、冷たい眼差しで前方を見つめた。黒い流線型のボディは、彼女の服装と相まって骨の髄まで豪快で野性的な雰囲気を醸し出していた。エンジンを始動させると、轟音が響き渡り、バイクは野生馬のように、カーブを切りながら電光石火のごとく街角から姿を消した!

優雅でありながら、傲慢な姿だった。

若者たちは来るのも去るのも早かった。

ななだけが残り、その場に立ち止まってしばらく見つめた後、スマートフォンを手に黒水通りへとゆっくりと戻っていった。

途中で渡辺泉を一瞥し、礼儀正しく頷いた。

渡辺泉はしばらく我に返れなかった。普段は優美で、安藤宗次の前では従順に見える白川華怜が、バイクのコーナリングをあんなに巧みにこなすとは、まったく予想していなかった!

バイクの影が街角から消えた後、秘書がようやく口を開き、渡辺泉の方を見た。「社長、これは...」

彼もこのような場面は見たことがなかった。陽城市に来る前に、安藤蘭は白川華怜が何でもやる不良だと言っていたが、彼らが白川華怜のバイク乗りを目にしたのは今回が初めてだった。

さっきの不良少年たちといい...

さすがは渡辺泉が学校に入れるよう手配しなければならないほど成績の悪い人物だ。

「もういい」渡辺泉は頭痛に太陽穴を押さえながら言った。「このことは蘭香には言うな。天田社長を探しに行っただけでいい」

「この案件は手に入らないでしょう。江渡に戻る時期です」秘書は車のドアを開け、渡辺泉を中へ案内した。

元々陽城市の観光業のために来たのに、今は天田雨都がいるため、もはやチャンスはないようだった。

せっかく得た情報なのに、このまま帰るのは少し悔しかった。

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バーの個室。