「順子さん……」白鳥春姫は車の窓越しに、校門の文字を見つめていた。
歴史を感じさせる古風な校門だった。門は何度も修繕されてきたが、今でもその歴史の重みが感じられる。その上には金文字で六文字が輝いていた——
【江渡音楽学院】
全国、そしてアジアでも最高峰の音楽学院。
学生の選考は非常に厳しく、毎年王立音楽堂への推薦枠もあり、国家級の演奏家たちが教鞭を執っている。
芸能界でも江渡音楽学院の卒業生が二人おり、デビュー前からネット上で注目を集めていた。
校門前の大きな照明が白鳥春姫の瞳に冷たい光を映し出していた。
眩しすぎる光の中で、白鳥春姫はまるで夢を見ているような感覚に陥った。
運転席の窓が下がり、彼女たちを迎えに来た男子学生が門衛と慣れた様子で挨拶を交わした。「はい、藤野院長の関係者です。はい、おじさん、失礼します」