107 渡辺泉と田中局長の対面(2/2)

「順子さん……」白鳥春姫は車の窓越しに、校門の文字を見つめていた。

歴史を感じさせる古風な校門だった。門は何度も修繕されてきたが、今でもその歴史の重みが感じられる。その上には金文字で六文字が輝いていた——

【江渡音楽学院】

全国、そしてアジアでも最高峰の音楽学院。

学生の選考は非常に厳しく、毎年王立音楽堂への推薦枠もあり、国家級の演奏家たちが教鞭を執っている。

芸能界でも江渡音楽学院の卒業生が二人おり、デビュー前からネット上で注目を集めていた。

校門前の大きな照明が白鳥春姫の瞳に冷たい光を映し出していた。

眩しすぎる光の中で、白鳥春姫はまるで夢を見ているような感覚に陥った。

運転席の窓が下がり、彼女たちを迎えに来た男子学生が門衛と慣れた様子で挨拶を交わした。「はい、藤野院長の関係者です。はい、おじさん、失礼します」

門が開いた。

男子学生は車を中に入れた。

最後に一つの事務棟の前で停車し、後部ドアが自動で開いた。

白鳥春姫と順子さんが地面を踏んだ時、まるで綿を踏んでいるかのような不思議な感覚だった。

ここは江渡音楽学院、来世でも入学できないような場所だった。

「白鳥さん、録音スタジオまでご案内します」男子学生は二人に微笑みかけ、エレベーターで三階まで案内した。

六時近くになっていた。

三階の録音スタジオには明かりが点いており、数人が中で話し合っていた。

遠くから、男子学生は彼女たちに背を向けている藤野信勝の姿を見つけた。「藤野院長!到着しました!」

藤野信勝は太鼓のリズムと琵琶、笛の音を録音させているところで、お箏の音は自分で録音したものだった。声を聞くと振り返って二人を見た。「こんにちは、藤野です」

簡単な自己紹介の後、すぐに白鳥春姫に向かって言った。「まずこれを聴いてください。30分後に録音を始めます」

彼は録音機とヘッドホンを白鳥春姫に渡した。

そして携帯を取り出し、白川華怜にメッセージを送った——

【到着しました】

白鳥春姫は我に返り、ヘッドホンを受け取って真剣に聴き始めた。

順子さんは脇に下がった。江渡音楽学院は彼女の世界とはあまりにもかけ離れていた。藤野信勝のことは知らなかったが、深いため息をつきながら、先ほど案内してくれた男子学生に尋ねた。「てっきりクラウンスタジオに行くのかと思っていました」