白川華怜は電話を切った。
実際、彼女は考える必要すらなかった。
どれだけ時間をもらっても、奥田幸香への答えは一つだけだった。
結局のところ、北区第一中学校に残りたかったのなら、そもそも陽城市に戻ることはなかったはずだ。
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江渡は北区より小さいが、十数区ある。
市の中心部は興和区で、雲翔区と平安区は学園都市と経済発展の繁華な地域であり、渡辺家は比較的郊外の富田区にある。
渡辺家の古い邸宅。
渡辺お婆さんは黒い綿入れを着て、白髪混じりの髪を後ろで束ね、古い別荘の裏庭の温水池の側で魚に餌をやっていた。傍らには黒いコートを着た凛とした女性が立っていた。
渡辺執事が音もなく現れた。
「人は?」渡辺お婆さんは片手に黒光りする杖を持ち、もう片手で隣の壺から魚の餌を掴んで、湯気の立つ池に撒いた。錦鯉の群れが水面から跳ね上がって餌を奪い合った。