白川明知は既に北区に戻っており、松木皆斗がまだ博源塾にいるため、松木奥様はまだ戻っていなかった。
ついでに江渡で新年を過ごすことにした。
白井沙耶香が学校の発表会に選ばれたと知り、松木奥様は時間を見つけては彼女を見に来ていた。
今日は松木皆斗が井上家で食事をすることになり、松木奥様は特別に白井沙耶香を迎えに来た。
江渡音楽学院で学ぶ生徒たちは、家柄がみな侮れないものばかりで、白井沙耶香の家柄は彼らの中では比較的低く、一緒に学ぶ生徒たちも彼女に対して冷たかった。
松木奥様は生徒が白井沙耶香の腕にすがりつくのを初めて見た。
白井沙耶香も驚いて、松木奥様の方を見て、落ち着いた様子で「ちょうど藤野院長にお会いしたところです」と言った。
「私も見ましたよ」松木奥様は感慨深げに言った。彼女が来た時、藤野院長が出て行くところを見かけたが、知り合いになる機会がなかったのだ。