水島亜美は口を開けようとして、鏑木執事を見つめながら説明した。「華怜の成績はとても良くて……」
前回、渡辺家で。
渡辺千月が白川華怜がある「源」基地にいると言っていたが、水島亜美は教養がなく、半年経って、ほとんど忘れてしまっていた。
どんな基地だったか覚えていないが、白川華怜が江渡大学に推薦入学できる可能性が高いことは知っていた。
彼女にとって、白川華怜が北区大学に入れるだけでも十分驚きなのに、まして江渡大学となると。
「分かっています」鏑木執事は水島亜美を一瞥し、やや投げやりな口調で答えた。
彼は水島亜美から白川華怜の成績が良いという話を何度も聞いていた。
しかし望月家は名門であり、鏑木執事はどれほどの天才を見てきたことか。白川華怜の成績がいくら良くても、かつての望月家の天才たちに及ぶだろうか?
「華怜のお母さんがまだ帰っていないんです」安藤秀秋はタバコを一本取り出し、指で挟んだまま火をつけずに言った。「私たち二人が帰らないと、彼女の調子に影響するかもしれません」
調子に影響する?
鏑木執事は心の中で思った。影響があってもなくても彼女にとってはどうでもいいのではないか。
しかし長年の付き合いで、鏑木執事は安藤秀秋の性格を知っていたので、無理に引き止めることはせず、ただ言った。「分かりました。須藤に送らせましょう。早く戻ってきてください」
彼は時間を計算した。大学入試が終わったら端午の節句だ。
もし安藤秀秋が試験終了後すぐに出発すれば、間に合うかもしれない。
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6月5日。
十五組、高校生活最後の授業。いつもは活発な森園雄もこの時ばかりは静かにしていた。
奥田幸香は両手で教壇を支え、クラス全員を見渡し、最後に畑野景明の隣の席で少し目を留めた。「みなさん、明後日、あなたたちは戦場に向かいます。これは一人一人の戦いです。私はここであなたたちの凱旋を待っています」
窓の外では、夕日が林に落ち、雲霧に半ば隠れ、光が四方に反射していた。
赤い夕焼けを映し出していた。
奥田幸香は試験の注意事項について話し始めた。実際、彼女は何度も話していた。
教室は静かで、全ての生徒が彼女の話を聞いていた。
試験の注意事項を聞いているのか、それとも高校最後の試験の注意事項を聞いているのか。
しばらくして。