数人が遠ざかるまで、草山教授は加藤隼也と挨拶を交わしただけで、白井沙耶香と松木奥様は白川華怜に一言も話しかけることはなく、松木奥様の視線は白川華怜の後ろ姿に向けられたままだった。
彼女と白井沙耶香は、このような場で白川華怜に出会うのは初めてだった。
白川華怜は片手を背中に回し、淡々と加藤隼也と話をする姿は、まるで絵巻物から抜け出してきた名家の子息のようで、謙虚でありながらも引けを取らず、彼女が見てきた誰よりも自然な佇まいだった。
彼女たち二人に比べて、宇野靖はエレベーターで出会った綺麗なお姉さんだと思い出していた。
「先生」宇野靖は白川華怜の後ろ姿を見ながら、「学長の隣にいたあの美人は……」
「無礼者め」草山教授は視線を戻し、その不適切な美人という言葉を笑いながら叱った。「誰かは知らないが、皆さん会ったら礼儀正しくするように」