贈り物は木村浩に渡して、代わりに届けてもらうしかなかった。
二人とも忙しく、同じ江渡にいても、年末に会う機会は陽城市よりも少なかった。
白川華怜は上品な白檀の箱を手に取り、席に座った。箱は少し重く、すぐには開けずに、木村浩に最近の研究室の話をした。
上原文隆の研究室は忙しいが、雰囲気は良かった。
木村浩は彼女が研究室の話をする時の生き生きとした様子を見て、研究室と畑野景明のことについてはそれ以上聞かなかった。
「高橋おばさんに、おじいさまが刺繍した絹のスカーフを持っていこうと思うの」白川華怜は白檀の箱を手で弄びながら、高橋唯から梅見の誘いがあったことを木村浩に話した。
高橋唯は先日から白川華怜と高橋雅を渡辺家の梅見に誘っていた。
高橋雅は劇場の引き継ぎで忙しく、白川華怜も研究室で忙しかったため、この梅見の約束はまだ実現していなかった。