302NO.9白川博、青龍バーの波乱_3

藤野院長は彼女に頷き、白川華怜に田中当主のことを話し続けた。「彼は本当にあなたのことを高く評価しているわ」

白川華怜はエレベーターのボタンを押し、それを聞いて、上品に微笑んだ。「ありがとうございます」

「ディーン——」

エレベーターが到着した。

白川華怜は中に入り、藤野院長に礼儀正しく別れを告げた。

エレベーターのドアがゆっくりと閉まる中、藤野院長は彼女の艶やかな顔をまだ見ることができた。今日も新しい簪を付けていて、薄紫色の玉のかんざしだった。その黒い瞳は幾重もの霧のように、人を測り知れないものにしていた。

「田中家」というような名門家族の名前を聞いても、相変わらず落ち着き払っていた。藤野院長は基本的に彼女に他の表情を見たことがなかった。

本当に白川華怜が何を望んでいるのか分からなかった。