彼女は中央に置かれた新しいお箏を見つめていた。
「いつ買ったの?」振り向かずとも、彼が出てきたことが分かっていた。
木村浩は彼女が髪を乾かすのが苦手なことを知っていたので、浴室からドライヤーを持ってきて、ソファに座らせて髪を乾かしてあげた。「この前、展示会に運ばれる前に押さえておいたんだ」
まだ展示会にも出ていないお箏だった。
白川華怜はソファに横たわり、もう木村浩にこの楽器がいくらしたのか聞くことはなく、ただ藤野院長がこの楽器のことを知っているかどうか、家に来て見てもらうべきかどうかを考えていた。
髪を乾かしている途中で、上原文隆から電話がかかってきた。
彼が何か言ったが、白川華怜にはよく聞こえなかった。彼女は振り向いて「ちょっと切って」と言った。
木村浩はドライヤーのスイッチを切った。