304千夏、これは松田会長_4

儀式がまもなく始まろうとしていた。鬼塚星雄たちはグラスを手に、数歩離れた白川華怜と厚田千夏に向かって乾杯の挨拶をし、そして羽田正彰に小声で話しかけた。「君の今回の一手は最悪だったな。君の婚約者の方を見てみろよ。やっぱり業界では明石さんと渡辺次女様の支持者が多いようだな」

「人望なんて求めていない」羽田正彰は襟元を正した。

彼が目をつけたのは厚田千夏の経営能力だった。

鬼塚星雄は肩をすくめ、厚田千夏を評して言った。「大門を出ず、二門をまたがずの大家のお嬢様か。つまらなさすぎるな」

彼らが話している最中。

中央で、厚田おばあさまと厚田おじさん、そして羽田のお父さんお母さんと重要な取引先たちが突然入口の方へ向かった。

この動きに、ほとんどの人が気づいた。

鬼塚星雄は立ち止まり、羽田正彰の方を見た。「今日、まだ誰か来るのか?」