「どうしてここにいるの?」彼女は驚いて言った。彼は部屋にいるはずじゃないの?
「お姉さんに早く会いたくて、下りて待っていたんだ」温井卿介は言い、仁藤心春の蒼白い顔に視線を落とし、思わず眉をひそめた。「顔色がとても悪いね」
まるで血の気が全くないようだった。
「薬を飲めばすぐ良くなるわ」仁藤心春は言った。彼女は知っていた、これは白血病の症状、貧血だということを!
今や彼女の体に徐々に現れ始めていた!
これからきっとこの症状は、ますます深刻になっていくだろう。
「どんな薬?」温井卿介は尋ねた。
「ちょっと貧血気味で、貧血の薬を飲めば大丈夫よ」仁藤心春は軽く言い流した。「もう大丈夫だから、上がりましょう」
温井卿介の瞳が微かに光った。「ああ」
アパートに戻り、仁藤心春が身支度を整えると、温井卿介が促した。「お姉さん、薬を飲まないの?」