仁藤心春は首を振って、「いいえ」と答えた。
「いいえって?」山本綾音は目を丸くして、「付き合ってるんでしょう?もっと知ろうとするべきじゃない?」
「いつか、彼が私に話したいと思う時が来たら、その時に知ればいいの。もし彼が話したくないなら、このままはっきりしないままでも構わないわ」と仁藤心春は言った。
その時、仁藤心春の携帯電話が突然鳴り出した。
彼女が携帯電話を見ると、着信は雲子おばさんからだった。以前悠仁を見出してモデルカードを撮ろうとしたマネージャーだ。
当時、お互いに連絡先を交換していた。
電話に出ると、雲子おばさんの焦った声が聞こえてきた。「仁藤心春さん、悠仁のお姉さんですよね。悠仁が少し困っているんです!」
「えっ?」仁藤心春は驚いた。
「実はね、あるクライアントが悠仁に写真を撮らせたがっているんですが、悠仁が拒否したものだから、相手が悠仁をサーキット場に監禁してしまって。早く来て、悠仁を説得してください」雲子おばさんはサーキット場の住所を伝えた。