第71章 彼女のために人を救う

仁藤心春は一瞬驚いて、「もしかして……さっきの子供を助けに飛び込んだのは、私のためだったの?」

「うん」彼は小さく答えた。

誰が水に落ちたのか、落ちた人が命を落とすかどうかなど、彼にはどうでもよかった。でも、彼女が人を助けようと水に飛び込もうとした時、彼の頭の中は真っ白になり、本能的に駆け寄って彼女を引き止め、自分が代わりに飛び込んで人を助けたのだ!

「どうして?」仁藤心春は呟くように尋ねた。

温井卿介は答えず、ただ彼女の首筋に顔を埋め、両手でより強く彼女を抱きしめた。

そして彼女は、自分を抱きしめているその腕が、かすかに震えているのを感じることができた。

幸い、すぐに現場のスタッフが薄い毛布を持ってきて、びしょ濡れの温井卿介を包むことができた。

仁藤心春も、先ほど濡れた温井卿介に抱きしめられたため服が半分濡れてしまい、薄い毛布で体を包んでから、スタッフと一緒に休憩室へ向かった。