第89章 酔ったのは彼だった

「昨夜、鼻水と涙を流しながら私にしがみついて帰らせてくれなかったのはお前だぞ。そうでなければ、なぜまだここにいると思う?」秋山瑛真は物憂げに答えた。

仁藤心春は顔を赤らめた。車の中での会話は覚えているが、それ以外のことは全く記憶にない。

「私...私、その後、変なことしなかった?」彼女は少し気まずそうに尋ねた。

彼は彼女を見つめ、体を起こして彼女の前に近づいた。「昨夜、お前を送り届けた後、お前が俺をベッドに押し倒して、キスしたり抱きついたりして、俺とベッドインしようとしたって言ったら、どうする?」

仁藤心春の顔は一瞬にして赤くなったり青ざめたりした。そしてすぐさま否定した。「そんなはずない!」

「なぜそんなはずがないんだ?」秋山瑛真は問い返した。

「だって...瑛真は...」彼女は躊躇いながら、言葉を続けるべきか迷っているようだった。