第213章 嫉妬

温井卿介は急に体を起こし、隣のベッドの空いた場所を見つめた。彼女が横たわっていた場所の温もりは、さっき離れたばかりのものではなかった。つまり、彼女はしばらく前に離れていたということだ。

彼の視線はベッドサイドテーブルに落ちた。そこには今日田中悠仁に断られた香り袋が置いてあったはずだった。

しかし今、その香り袋は消えていた。

温井卿介はベッドから降りて部屋を見回し、トイレのドアの隙間から漏れる微かな明かりを見つけた。

トイレのドアの前まで行き、ノックしようとした瞬間、中から泣き声が聞こえてきた。

お姉さんが泣いている?!

彼の手は宙に止まったまま、ノックすることはできなかった。

今日の田中悠仁のことで、彼女は泣いているのだろうか?

彼には分かっていた。今日田中悠仁がこの香り袋を断ったとき、彼女がどれほど辛かったか。本来なら喜ぶべきだった。結局のところ、これで田中悠仁と彼女の距離は、ますます遠くなるのだから。