しかし……死に至るケースの方が多く、潮流の存在を知り、そして適切なタイミングで潮流に飛び込み、その流れに身を任せることができた場合にのみ、生還の可能性があった。
ただ、これらのことを目の前の山本綾音に伝えるのは、少し躊躇われた。
この話が彼女を悲しませてしまうのではないかと恐れたからだ!
どうあれ、少なくとも仁藤心春には生存の可能性があり、今から老漁師に会えば、あの海流と旋風が最終的に人をどこへ運ぶのかを明らかにできるはずだ。
「ただし、老漁師のところに着いたら、心の準備をしておいた方がいい。卿介もそこにいるから」と温井朝岚は言った。
山本綾音は一瞬固まった。温井卿介……あの日、正直なところ、温井卿介が海に飛び込んで心春を救おうとするとは思わなかった。さらに意外だったのは、心春が寶石の劍を温井卿介に渡してから、波に飲まれてしまったことだった。