「えっ?」仁藤心春は一瞬戸惑った。確かに、そのことについてはあまり考えていなかった。
今考えてみると、彼女が止めるように言ったとき、理論的には瑛真の方が止める可能性が高かったはずなのに、実際に先に手を止めたのは温井卿介だった。
「僕は、あなたに分かってほしかったんです。僕が望めば、子供の頃のように素直にあなたの言うことを聞くことができるということを。だから、私たち、子供の頃のようにやり直せないでしょうか?それって、いいと思いませんか?」彼は低い声で言った。
仁藤心春の体が硬直した。子供の頃のように...?
二人の間で、子供の頃のような何の疑念もない関係に戻れるのだろうか?
軟膏を塗り終え、仁藤心春が蓋をして立ち上がろうとした時、温井卿介は突然彼女の手を掴んだ。「お姉さん、あなたが子供の頃のように僕のことを気にかけて、心配してくれて、好きでいてくれるなら、僕は素直にあなたの言うことを聞きます。あなたが何をしろと言っても、それをします。たとえ殴られることになっても、怪我をすることになっても、やります。」