仁藤心春は携帯を取り出し、操作を行いながら、島田書雅にお金が指定の口座に振り込まれたことを確認させた。同時に、彼女は気づかれないように体を船の端へと少しずつ移動させていた。
この時、展志ちゃんを乗せたボートはすでに十分遠くの場所に停止していた。そして彼女は、ほんの少し後に狙撃手が島田書雅を射殺することを知っていた。
島田書雅に対して、彼女は聖母のような慈悲を示すつもりはなかった。結局のところ、島田書雅が展志ちゃんを誘拐することを選んだ時点で、命を失う覚悟をしておくべきだったのだ。
そして今、船の上で何か変事が起きた場合、彼女はすぐに海に飛び込んで逃げることができる。
彼女は泳ぎが得意で、海の中で少し持ちこたえれば、必ず救助が来ると確信していた!
しかしその時、突然島田書雅がイヤホンで何かを聞いたようで、表情が一変し、凶悪な目つきで仁藤心春を見つめた。「くそっ、あなたは私を騙した。あなたがそう簡単に私たちを見逃すはずがないと思っていた。警察に誘拐犯たちを全員逮捕させるなんて!」
こうなると、彼女がここから逃げ出せたとしても、口座のお金を手に入れることはできない。結局、その口座は他人が開設したもので、彼女はどうやってお金を引き出せばいいのか全く知らなかった。
島田書雅が手を上げてリモコンのボタンを押そうとした瞬間、一発の銃声が響き、正確に島田書雅の体に命中した。彼女の手からリモコンが船の甲板に落ち、島田書雅の体はぐったりと倒れた。
島田書雅の体は痙攣し、死の気配が彼女を包み込んでいた。彼女は不満に満ちた目で仁藤心春を見つめていた。
もう少しで人生をやり直せるところだったのに、すべては仁藤心春のせいだ...すべてはこの女のせいで、彼女の人生はこうして無意味に過ぎ去ってしまう!
「仁藤心春...お前...調子に乗るな...お前の娘の体には...まだタイマー爆弾が...ハハハ...もうすぐ...爆発する...」島田書雅はこの言葉を言い終えると、ついに恨みを残したまま息絶えた!
仁藤心春の顔色が急変し、遠くのボートを見つめた。展志ちゃんの体に...まだタイマー爆弾が?どこに?さっき爆弾を解除した時には、何も見つからなかったはずだ!
だめだ、こんなことあってはならない!