霧島冬真は夏目星澄が初めて離婚を切り出した時、彼女が頭が混乱しているだけだと思い、沈黙で拒否を示した。
しかし、その後も彼女が何度も離婚を持ち出すようになり、彼は不満を感じ始めた。
海外出張で数日間彼女を放置したが、これまで自分の面倒を見てくれた恩義もあり、もう一度チャンスを与えることにした。
大谷希真も夏目星澄がただ拗ねているだけかもしれないと言い、なだめるように勧めた。
その時、彼は彼女が何に拗ねているのか想像もつかなかった。
あの集まりで梁川千瑠とゲームをするまでは。彼女は彼と梁川千瑠の関係を誤解してしまった。
大勢の前で結婚指輪まで投げ捨て、離婚すると宣言した。
彼、霧島冬真が誰だと思っているのか。一人の女に脅されるわけがない。
たとえその女が妻であっても許されない。
父親が離婚を後押ししていたとしても、不満ではあったが同意した。
ただ、今の離婚に冷静期間があるとは思わなかった。
これもいい。夏目星澄のはっきりしない頭を冷やさせればいい。
結局、三年間の夫婦生活で、彼も木石ではない。彼女に対して何の感情もないわけがない。
ただ、彼は本来冷淡な性格で、感情表現が苦手なだけだ。
そうでなければ、彼女が何度も離婚を持ち出すことを許すはずがない。
だから今、彼女が後悔したと言えば、何もなかったことにして、一緒に生活を続けることができる。
しかし夏目星澄は霧島冬真の言葉を聞いて、不思議に思った。
事態がここまで来て、どうして後悔などできるだろうか。
彼女はただ早くこの件を解決したいと思い、真剣な面持ちで言った。「安心して、私は絶対に後悔しません。」
霧島冬真はそれを聞くと、視線を外し、手際よく書類の末尾に自分の名前を署名した。
すべてが決着した。
民政局を出て、夏目星澄は慎重に離婚証明書をバッグに入れ、また誠実に霧島冬真に言った。「霧島冬真さん、離婚おめでとう。」
今度は彼女という障害がなくなったから、好きな人と結婚できる。
梁川千瑠でなくても、木村千瑠でも田中千瑠でも、とにかく彼女には関係ない。
霧島冬真は無表情で彼女を見つめた。
夏目星澄は霧島冬真との別れは穏やかだったと思った。夫婦にはなれなくても友人にはなれる。
彼女は今後も霧島お婆様と霧島お爺様に会いに行きたいと思っていた。