夏目星澄は重荷から解放されたかのように芦原雅子のオフィスを出た。
出る前に、お腹の具合が悪くなり、トイレに行った。
しばらくすると、個室の外から霧島グループについて話し合う声が聞こえてきた。
「おかしくないかしら?あの有名な霧島グループが、私たちのような会社に広報のエースを派遣してくれるなんて。私の知る限り、傘下のMエンターテインメントの看板女優の岡田英梨でさえ、こんな待遇は受けていないのよ」
「そうよね。岡田英梨はMエンターテインメントのトップ女優で、出演作品はすべて大作よ。少なくとも数十億円規模のプロジェクトばかり。あのスキャンダルが出た時、たくさんのCMが契約解除を申し出て、違約金だけでも数億円だったわ!」
「岡田英梨は怖くなって霧島グループの社長に頼み込んで、広報チームにイメージ回復をお願いしたのに、社長は相手にもせず、秘書に『自分の問題は自分で解決しろ。できないなら引退しろ』って一言だけ伝えさせたのよ」