夏目星澄は一人で病室にいて、眠りたくても眠れなかった。
退屈なので窓の外の星を眺めていた。
見ているうちにトイレに行きたくなった。
でも今は体が弱っていて、自分で動くのも不便だった。
時計を見ると、もう12時近かった。
こんな遅くに看護師を呼び出すのも気が引けた。
少し迷った後、結局一人で壁を伝ってトイレに行くことにした。
一歩進むごとに休みながら進んだ。
トイレの入り口に着く頃には息が切れていた。
今や進退両難の状態だった。
看護師を呼ばなかったことを少し後悔していた。
夏目星澄は焦って泣きそうになった。まさか最後にお漏らしするなんて...
それこそ大恥をかくことになる。
誰かを呼ぶべきか迷っているところで。
突然病室のドアが開いた。
夏目星澄は心の準備もなく驚いて、転びそうになった。
幸い来た人が素早く彼女を支えてくれた。
夏目星澄はそのまま霧島冬真と向かい合って見つめ合った。
霧島冬真は不機嫌な声で尋ねた。「どうして一人でベッドを降りたんだ?林田瑶子は付き添っていないのか?」
夏目星澄は掠れた声で言った。「林田瑶子には家に帰って休むように言ったの。」
「看護師を呼べばよかったのに、なぜ一人で無理をする。まずはベッドに戻ろう。何か必要なことがあれば私に言ってくれ。」
霧島冬真はそう言いながら彼女をベッドに連れ戻そうとした。
夏目星澄は泣きそうになった。ここまで来るのに苦労したのに、戻されたら無駄足になってしまう。
それに今はトイレに行きたいのに!
「戻りたくない。」夏目星澄は霧島冬真の手から逃れようとした。
霧島冬真は夏目星澄が駄々をこねていると思った。「駄々をこねないで、おとなしくベッドに戻りなさい。」
夏目星澄は顔を赤らめ、小声で呟いた。「駄々をこねてないの、トイレに行きたいだけ。」
霧島冬真には聞き取れなかった。「何て言った?」
「トイレに行きたいって言ったの。」夏目星澄の顔はさらに赤くなった。
霧島冬真は数秒間呆然としたが、何も言わずに腰を曲げて彼女を抱き上げ、トイレまで運んで、慎重に便器の上に降ろした。
夏目星澄は見ざる聞かざるの如く自分の顔を隠した。
何も起こらなかったことにしよう。
霧島冬真は面白そうに言った。「終わったら、拭くのが大変なら、私を呼んでもいいよ。」