第112章 お前は自分が誰だと思っているのか

夏目星澄は一人で病室にいて、眠りたくても眠れなかった。

退屈なので窓の外の星を眺めていた。

見ているうちにトイレに行きたくなった。

でも今は体が弱っていて、自分で動くのも不便だった。

時計を見ると、もう12時近かった。

こんな遅くに看護師を呼び出すのも気が引けた。

少し迷った後、結局一人で壁を伝ってトイレに行くことにした。

一歩進むごとに休みながら進んだ。

トイレの入り口に着く頃には息が切れていた。

今や進退両難の状態だった。

看護師を呼ばなかったことを少し後悔していた。

夏目星澄は焦って泣きそうになった。まさか最後にお漏らしするなんて...

それこそ大恥をかくことになる。

誰かを呼ぶべきか迷っているところで。

突然病室のドアが開いた。

夏目星澄は心の準備もなく驚いて、転びそうになった。

幸い来た人が素早く彼女を支えてくれた。

夏目星澄はそのまま霧島冬真と向かい合って見つめ合った。

霧島冬真は不機嫌な声で尋ねた。「どうして一人でベッドを降りたんだ?林田瑶子は付き添っていないのか?」

夏目星澄は掠れた声で言った。「林田瑶子には家に帰って休むように言ったの。」

「看護師を呼べばよかったのに、なぜ一人で無理をする。まずはベッドに戻ろう。何か必要なことがあれば私に言ってくれ。」

霧島冬真はそう言いながら彼女をベッドに連れ戻そうとした。

夏目星澄は泣きそうになった。ここまで来るのに苦労したのに、戻されたら無駄足になってしまう。

それに今はトイレに行きたいのに!

「戻りたくない。」夏目星澄は霧島冬真の手から逃れようとした。

霧島冬真は夏目星澄が駄々をこねていると思った。「駄々をこねないで、おとなしくベッドに戻りなさい。」

夏目星澄は顔を赤らめ、小声で呟いた。「駄々をこねてないの、トイレに行きたいだけ。」

霧島冬真には聞き取れなかった。「何て言った?」

「トイレに行きたいって言ったの。」夏目星澄の顔はさらに赤くなった。

霧島冬真は数秒間呆然としたが、何も言わずに腰を曲げて彼女を抱き上げ、トイレまで運んで、慎重に便器の上に降ろした。

夏目星澄は見ざる聞かざるの如く自分の顔を隠した。

何も起こらなかったことにしよう。

霧島冬真は面白そうに言った。「終わったら、拭くのが大変なら、私を呼んでもいいよ。」