林田瑶子は夏目星澄がそう言うのを聞いて、むしろ安心した。
なぜなら、夏目星澄がどれほど心優しい人で、子供をどれほど愛しているかをよく知っていたからだ。
そんな優しい性格の持ち主が、小さな命を消すなんてできるはずがない。
ましてや自分の血を分けた子供なのだから。
夏目星澄は病院を出て、ずっと胸に抱えていた息を、ようやく吐き出した。
「瑶子、私が気が変わったことを責めないでしょう?」
「まさか、あなたがどんな決断をしても私は支持するわ」
夏目星澄は感動した。どんなことが起きても、林田瑶子は常に彼女を一番支持してくれる存在だった。「ありがとう、瑶子」
「もう、そんなことで感謝することないわよ。でも、どうして急に子供を産むことに決めたの?」
「信じられないかもしれないけど、昨日の夜、彼の夢を見たの」
夏目星澄は昨夜見た夢を林田瑶子に話した。
林田瑶子は話を聞いて、少し不思議に思った。「あなたが直接話してくれなかったら、信じられないわ。その夢って、いわゆる胎夢じゃない?」
「そうかもしれないわね。でも、もういいの。この子を産むって決めたんだから、きっとちゃんと育てていくわ」夏目星澄は自分を励ました。
林田瑶子ももちろん百パーセント支持した。「そうよ、子育てなんて、どれだけ大変なことがあるの?今から私はこの子のゴッドマザーよ」
夏目星澄は笑いながら林田瑶子の頬をつついた。「ははは、ゴッドマザーだなんて。あなたが東條煌真と結婚して子供ができたら、私の子なんて構ってられなくなるわよ」
林田瑶子はすぐに否定した。「絶対そんなことないわ。私と東條煌真が本当に結婚しても、そう簡単には子供は作らないわよ。まだ自分の人生を楽しみたいし、母親という言葉に縛られたくないもの」
「あなたったら、今はそう言ってるけど、東條煌真が子供が欲しいって言い出したら、断れるの?」
「断れるわよ。うちの東條煌真は私の言うことを聞くんだから!」
「そうそう、あなたの東條煌真はあなたの言うことを何でも聞くのよね」
夏目星澄はもう反論せずに、彼女を家に連れて帰った。
林田瑶子は夏目星澄の新居に座って、どう見ても気に入らない様子だった。「星澄、この家は一人暮らしならまだいいけど、これからベビーができたら、不便かもしれないわね」