第130章 あなたがいてくれて良かった

夏目星澄は林田瑶子を部屋に引っ張り込み、焦りながら尋ねた。「どういうこと?今の東條煌真はあなたの知っている東條煌真じゃないって。一体どうしたの?」

林田瑶子は東條煌真の様子がおかしいことを全て夏目星澄に話した。

「どんなに変わったとしても、自分がどんな食べ物にアレルギーがあるかくらい知っているはずでしょう?それは命に関わることなのよ」

夏目星澄自身もマンゴーアレルギーで、その深刻さをよく理解していた。

林田瑶子の言う通りだった。人がどれほど変わったとしても、自分の命を危険にさらすようなことはしないはずだ。

しかも東條煌真は薬を盛るという卑劣な行為までしている。

彼の目的は一体何なのか?

「この前、お金を借りようとしたって本当?」

「ええ、50万円借りたいって。私も普段お金の使い方にあまり気を使わないし、欲しいものがあれば買っちゃうから、貯金もなくて10万円しか貸せなかったの...そういえば、今住んでいる家がいくらするか聞いてきたわ。もしかして家を狙っているのかしら?」

夏目星澄は深刻な表情で言った。「つまり、この家目当てに薬を盛って、結婚を強要しようとしたってこと?」

よく考えれば、そういう可能性もないわけではない。

今時の人は金のためなら何でもする。

でも東條煌真がそんな人だとしても、自分の命を危険にさらしてまで、アレルギー物質をたくさん食べるはずがない。

確かに不可解だ。

「瑶子、もうダメよ。警察に通報しましょう。警察に東條煌真のことを徹底的に調べてもらいましょう」夏目星澄は林田瑶子が東條煌真と接触することが心配でならなかった。

今回は薬を盛る計画が失敗したが、次はもっと悪質な手段を使うかもしれない。林田瑶子が彼と一緒にいれば、より危険な目に遭うだけだ。

林田瑶子は胸が痛んだ。東條煌真のことを諦められなかった。

「もし調べた結果、本当に私の知っている東條煌真じゃないとしたら、本物の東條煌真はどこにいるの?」

もし彼がピーナッツアレルギーだということを知らなければ、ずっと騙され続けていたかもしれない。

でも東條煌真を何年も愛してきた彼女には、簡単に諦められるはずがなかった。