林田瑶子はエイミーのオフィスを出ると、すぐにニューヨーク行きの航空券を予約した。
そして、夏目星澄にこのことを伝えた。「星澄、私はニューヨークに東條煌真を探しに行くわ。良い知らせを待っていてね。」
「東條煌真の情報が入ったの?」
「いいえ、でももう待てないの。直接会いに行くわ。」
夏目星澄は心配そうな声で言った。「だめよ、瑶子。一人で行くのは危険すぎるわ。お兄さんは知ってるの?」
林田瑶子は胸の中の怒りを抑えながら言った。「知らないわ。知らせたくもない。星澄、あなたは知らないでしょうけど、兄さんがどれだけおかしいか。私を心理カウンセラーに連れて行ったのよ!」
夏目星澄は一瞬固まった。どうして心理カウンセラーに?
もしかして、林田瑶子が東條煌真は偽物だと言ったから、彼女の精神状態がおかしいと思ったのかしら?
「瑶子、どう考えても、一人でニューヨークのような大都市に行くのは危険すぎるわ。お兄さんに必ず知らせるべきよ。」
林田瑶子は頑として聞き入れなかった。「だめ。兄さんに言ったら、行けなくなるわ。このことは放っておいて。」
夏目星澄はニュースで見ていた。最近ニューヨークは不穏な空気で、デモが起きているという。
林田瑶子が一人の女性として海外を東奔西走するのは、絶対に危険だ。
「それなら、私も一緒に行くわ。」
「星澄、私のことを心配してくれるのはわかるけど、あなたのことも考えて。今はもう一人じゃないでしょう。お腹に赤ちゃんがいるのに、十数時間もフライトに耐えられないわ。それに、パスポートもないから出国できないでしょう。」
「もう話すのはここまでよ。空港に行かなきゃ。着いたら連絡するから。」
林田瑶子は言い終わると、すぐにタクシーで帰宅し、荷物をまとめて空港へ向かった。
林田真澄は用事があって会社に戻っていたが、林田瑶子を迎えに行った時、彼女が一時間以上前に出て行ったことを知った。
「この子ったら、行くなら一言言ってくれればいいのに。」
エイミーは慰めるように言った。「真澄、慌てないで私の話を聞いて。私の判断では、林田瑶子に妄想症の症状はないわ。」
林田真澄は眉をしかめた。「じゃあ、なぜ彼女は東條煌真が偽物だと言い張るんだ?」