もし霧島冬真がこの言葉を離婚前に夏目星澄に言っていたら。
彼女はきっと感動していただろう。
でも今は、彼女の心には何の波風も立たなかった。
霧島冬真の言葉が本心なのか、試しているだけなのか、それとも面白半分なのか分からないから。
それに彼がこれほど復縁にこだわるのも、彼女のお腹の子供のためだけ。
「私はあなたの妻という立場に興味はないし、復縁もしたくありません。それは前から言っていたのに、あなたが信じないだけです」
「でも構いません。私は実際の行動で証明しました」
最初に霧島冬真と結婚を決めたのは、彼という人のため。
もし彼のことを気にしなくなったのなら、外面的なことなど気にするはずがない。
夏目星澄は、霧島冬真が突然態度を大きく変えたのは、彼女の細やかな気遣いや従順さに慣れてしまったからだと思った。
彼女が突然いなくなったことで、一人の生活に馴染めないのだ。
そこに彼女の妊娠という事実が加わり、復縁の完璧な理由になった。
でも今の彼女は復縁したくない。
どんな理由があっても。
「お前は自分のお腹の子供を、生まれた時から片親家庭の子供にしたいのか?」
「片親家庭が間違った存在とは限りません。少なくとも私はそう思います。それに、いつになってもあなたは子供の実の父親です。それは疑う余地もありません。私もあなたの面会権を奪うつもりはありません」
「でも復縁の話はもうやめてください。私たち二人の問題は多すぎて、子供が生まれたからといって変わるものではありません」
夏目星澄が霧島冬真に言わなかったのは、妊娠が分かった時、堕ろそうと思っていたこと。
最後に心が揺らいで、この子を産むことにしたのだ。
霧島冬真は諭すように言った。「復縁を提案したのは、子供のためだけじゃない。お前のためでもある。なぜ分からない?俺はお前の夫だ、敵じゃない。そんなに拒絶する必要はないだろう」
夏目星澄はすぐに彼の言葉を訂正した。「申し訳ありませんが、あなたは今私の夫ではありません。せいぜい元夫です」
霧島冬真の目が徐々に冷たくなった。「それなら敵として見た方がいい。そうすれば、誰も幸せになれない」
夏目星澄はもう彼と話を続ける気力がなかった。
好きなように考えればいい。
「好きにしてください。私はもう眠くて仕方がないので、失礼します」