第209章 彼女に薬を塗る

夏目星澄は撮影現場を出たばかりのところで、運転手が息を切らせながら別の方向から走ってきた。

「若奥様、軟膏を買ってきました。とりあえずこれで応急処置を。」

夏目星澄は少し驚いて、「私の顔が怪我をしているって、どうして知ってたの?」

運転手はすぐに説明した。「近くで水を買っていた時にエキストラの人たちから聞いたので、軟膏を買いに行きました。」

実は彼は霧島冬真に報告してから、薬局へ軟膏を買いに行ったのだった。

「ありがとう。いくらだったの?後で振り込むわ。」

「いいえ、若奥様。たいした金額じゃありません。」

「だめよ。あなただって簡単にお金を稼いでいるわけじゃないでしょう。いくらはいくらよ。」

「本当に結構です。領収書をもらってありますから、会社で精算できます。」

「そう、わかったわ。」