東條煌真もトイレの方を見ると、確かに不快な臭いが漂っていた。
きっと父親の「しでかしたこと」だ。
実家にいた頃から、こんな調子だった。
個人の衛生面に気を付けて、トイレは流すように何度言っても。
何度言っても、母は父の擁護をして、自分で掃除すると言い続けた。
だからこそ、林田瑶子に家族と接触させたくなかったのだ。
しかし、むしろ家族の方から林田瑶子に面倒を起こしに来る。
今回はさらにひどく、近所の子まで連れてきて瑶子の家に住み着こうとしている。
瑶子の気持ちなど全く考えていない。
東條煌真は不機嫌な顔で言った。「瑶子、心配しないで。今すぐ掃除するから。」
神田琴江はそれを聞いて不満げに、家では息子に一切の家事をさせなかったのに、どうして彼女の家のトイレ掃除をするのかと。
すぐに息子を止めて、「煌真、そこで止まりなさい。あなたは男なのよ、そんな汚い仕事なんてするものじゃないわ。林田瑶子にやらせなさい。ちょっと汚れただけで、何を神経質になってるのよ!」
江口楽々も意地悪そうな口調で言った。「そうよ、煌真さん、おじさまが故意にやったわけじゃないのに、そんなひどい言い方する必要ありますか?明らかにあなたの顔を潰してますよ。」
東條煌真は二人の言葉に怒り心頭で、「ここは瑶子の家だ。君たちが汚したトイレを自分から掃除しないどころか、人の悪口を言うなんて、それで俺の面子が立つと思うのか?」
彼は二人を無視して、直接トイレに入って掃除を始めた。
夏目星澄はその様子を見て、密かに林田瑶子に親指を立てた。
まさか実の母親の顔も立てないとは思わなかった。
あの幼なじみの女性のことも、もう気にしていないのだろう。
神田琴江は息子に掃除をさせたくなくて手伝おうとしたが、東條煌真に追い出された。
林田瑶子が清々しい香りを感じるまで、彼女の表情は少し和らいだ。
東條煌真はすぐに瑶子の前に来て、機嫌を取るように言った。「瑶子、怒らないで。掃除は全部終わったよ。二度とこんなことは起こさせないって約束する。」
林田瑶子は東條煌真の態度が良かったので、トイレの件は追及せず、代わりに顎を上げて向かいの江口楽々を指差して言った。「じゃあ、彼女のことについて話しましょう。お母さんが私の家に住まわせたいって言ってるけど、どうするの?」