病院の中で霧島雪栄は頭痛で眠れずにいた。
本来なら彼女に付き添うはずだった早川悠真は、突然会社に緊急の用事ができたと言って、急いで行かなければならなくなった。
彼女一人だけが病院に取り残され、とても寂しく見えた。
彼女は早川悠真のために、実家との関係を壊してしまい、頼れる人は彼だけだった。
そう思うと、霧島雪栄は早川悠真に電話をかけ始めた。七、八回続けてかけたが、電話はつながらなかった。
最後には自分の娘に電話をかけるしかなかった。
何度も電話をかけ、ようやくつながった。「晴乃、あなたどこにいるの?ママが入院したの、会いに来てくれない?」
早川晴乃はしばらく黙っていたが、やがてかすれた声で尋ねた。「早川悠真は?」
霧島雪栄はすぐに不満げになった。「晴乃、どうして急にお父さんの名前を呼び捨てにするの?そんなに彼を尊重しないなんて」