第122章 私はあなたに借りが多すぎる

小山千恵子は緊張して唾を飲み込み、突然何かを思い出した。

祖父が残した薬品は揃っていて、先ほど彼女と浅野武樹は狂犬病ワクチンまで見つけていた。

ここには薬効を解くものがあるかもしれない。

小山千恵子は数歩後退し、引き出しを探り始めた。

浅野武樹はまぶたを開け、小柄な女性が慌ただしく探し回っているのを見て、思わず掠れた声で話しかけた。

「探さなくていい。もう探したが、ない」

小山千恵子は後頭部がぞわぞわし、両手を震わせながら拳を握り、素早く考えを巡らせた。

目が輝き、浅野武樹が脱いだ血に汚れた服を探り始めた。

「以前持ち歩いていたはずよ。腕時計の中じゃない?身につけてる?」

「持ってこなかった。ヘリコプターに置いてきた」

クルーズ船に来る前、浅野武樹は認めた。自分が動揺していて仕方がなかったと。