優子と浅野武樹を連れ去った車を追跡していくと、すぐに大野武志が人質を監禁している場所が判明した。
帝都北郊の廃工場で、そこの警備員はすでに静かに処理されていた。
しかし、この状況になっても大野武志は彼女に連絡を取る気配がなかった。
大野武志は帝都で数年間姿を消していたが、今回の部下たちは全員マムシ組の者だった。
ほとんどが戸籍のない連中で、警察も手の打ちようがなかった。
「現在、犯人との連絡は取れていませんが、工場の周りに人員を配置して包囲態勢を整えています。小山お嬢さん、何かありましたらすぐにご連絡ください!」
小山千恵子は唇を噛みながら、太鼓のように鳴る心臓を落ち着かせようとしていた。
紅霞寺の火事が優子を連れ去るためだけだったとすれば、大野武志が手段を選ばず、狂気の沙汰に至っていることを物語っている。