小山千恵子は気を取り直し、立ち上がって会議テーブルに向かって歩いていった。
「取締役、株主の皆様、私はただの一本部長に過ぎず、秘書室の決定に対して、干渉する権利はありません。」
小山千恵子は目を伏せ、ポケットからUSBメモリを取り出し、会議室のパソコンに差し込んだ。
「しかし、取締役の皆様がお尋ねになったので、私の意見を述べさせていただきます。」
小山千恵子はパワーポイントを開き、詳細なデータとグラフが大画面に映し出された。
「浅野グループのファッションデザイン産業の本部長として、私は浅野グループが今この時期に映画芸術産業に参入することに賛成できません。」
会場が騒然となった。
「取締役会の決議は全会一致で通過したのに、彼女は何を反対しているんだ。」
「そうだよ、若気の至りだね。これが浅野社長の意向だということを知らないのかな。」
「しかもこのタイミングで反対意見を出すなんて、自分に不利になるだけで、何の得もないのに、まったく。」
小山千恵子は背筋を伸ばし、腕を組んで会場全体を見渡した。議論の声に全く影響されることなく、冷静に話し始めた。
「浅野グループはエンターテインメント業界への参入を早くから計画していましたが、私はデザインからの参入よりも、まず投資と特殊効果技術の面から着手する方が、浅野グループの発展エコシステムにより適していると考えています。」
小山千恵子はいくつかのグラフを拡大し、浅野武樹の冷たい視線を横切りながら目を向けた。
「さらに、浅野グループのファッションデザイン産業はようやく上向きになってきたところです。今最も重要なのは、自社ブランドの確立です。KRグループとの協力も、この点を維持すべきです。」
桜井美月は礼儀正しい微笑みを保ちながらも、目には悪意の光が宿っていた。
小山千恵子の言葉の意味は、彼女が越権行為をしたということか?
彼女は浅野武樹の方を振り向いた。男は万年筆を握りしめ、眉をひそめて何かを考えているようだった。
小山千恵子はいくつかのデータを簡単に分析し、自分の見解を補足した後、これ以上は話さないことにした。「私の意見は以上です。取締役の皆様にご満足いただければ幸いです。」