会場は騒然となった。
誰も思わなかった。目立たない子供が、こんなにも多くの是非を引き起こすとは。
浅野武樹の言葉には含みがあり、明らかにこの子供の身分が並々ならぬものだと暗示していた。
浅野遥は平然と立ったまま、桜井美月を秘書に押しやり、袖口を整えながら目を伏せた。
彼は当然バカではなく、準備万端で臨んでいた。
浅野武樹は、あの役立たずの母親と同じように愚かだが、少なくとも彼の頭脳は受け継いでいた。
浅野遥は浅野武樹を見上げ、淡々と口を開いたが、その威圧感は十分だった。
「子供は、私の判断で児童養護施設から養子に迎えたものだ。美月は幼い頃から苦労が多く、体を壊してしまった。子供が欲しかったのに叶わなかった。そんな些細な願いくらい、叶えてやらないわけにはいかなかった」