第376章 私は孫になれて久しい

桜井美月はソファーに座り直し、カシミアの毛布にくるまりながら、何気なく口を開いた。

「別に大したことじゃないわ。人に調べさせたら、今シルバースターレーシングチームで騒ぎが起きていて、混乱しているから、警備の隙をつくのは簡単よ」

彼女は中年の男たちを一瞥し、その視線には敬意も感情もなかった。

「この人たちは、私の父の元戦友たちよ。素直で使いやすくて、言うことを聞く。子供を誘拐するくらい、簡単なことでしょう」

浅野秀正の表情が暗くなり、目つきが急に冷たくなった。

桜井美月という女は、本当に愚かだった。

数人の手下をシルバースターセンターに送り込んでも、浅野武樹の配下にあっという間に制圧されるだろう。

そうなれば、計画は失敗するだけでなく、彼女の失態の後始末までしなければならない。