第355章 彼女は重要な存在

会場は一瞬にして静まり返り、針が落ちる音さえ聞こえるほどだった。

浅野武樹は一言も発せず、目に波風もなく、優雅に座っていた。

周囲の熱い視線の中、彼は前方の千葉隆弘を静かに見つめ、まるで他人事のようだった。

小山千恵子は横目で、浅野武樹が健一郎の背後に置いた手が密かに拳を握りしめているのを見た。

彼も怒りを感じていないわけではなかった。

小山千恵子は少しも意外に思わなかった。浅野武樹の気持ちは理解できた。

男は常に高い地位にあり、常に敬意を持って扱われ、どこへ行っても人々から仰ぎ見られる存在だった。

しかし今は、このような疑いと軽蔑の眼差しに直面し、人々の「神の座からの転落」を嘲笑う目に向き合わなければならなかった。

浅野武樹は心の中の怒りを黙って耐えていた。今は怒りを表すことも、反論することもできなかった。