第373章 手を繋ぐだけでドキドキする

浅野武樹の目には心配の色が隠せず、薄い唇を不機嫌そうに結び、タコのある指で優しく血の痂が付いた傷を撫でた。

喉仏を動かし、かすれた声で言った。「処置してから行こう。すぐだから」

浅野武樹は小山千恵子の手を無理やり引き寄せ、自分のコートのポケットに入れた。

小山千恵子は顔を赤らめ、軽く手を引こうとした。

「大丈夫よ、ちょっとした傷だから——」

浅野武樹が外科へ向かって大股で歩き出す中、小山千恵子の小さな抗議の声を聞いて、振り返って真剣な眼差しを向けた。

「千恵子、あなたはデザイナーだ。この手は大切にしないと」

小山千恵子はもう断れず、浅野武樹に手を引かれるままに歩いた。

彼女の手を包む大きな手は、相変わらず乾いていて温かく、彼女はその手のタコの位置を一つ一つ覚えていた。