第49章 清算

望月紀夫は彼女の傍に立ち、望月あかりが怒るのを恐れているかのように、急いで座り、彼女の肩を抱き、望月あかりの肩に寄りかかって説明した。「姉さん、怒らないで、聞いてください。この数年間、姉さんは辛い思いをしてきた。僕が家を守っていても、姉さんは帰ってこなかった。」

あの日々は、彼が思い出すのも怖い暗黒の時期だった。彼はこの家に一人で一秒たりとも居られなかった。恐怖が彼を襲うからだ。

「今、僕が家を売ったのは、姉さんがこれ以上苦労しなくていいようにするためです。これは父さんが残してくれた家で、僕たち二人を守るためのものだから、父さんも怒らないと思います。」

これは父の残した家ではなく、母が残した家だった。望月紀夫はこの家の由来を知らず、望月あかりもそれを説明するつもりはなかった。

「じゃあ、叔父さんが買いたいと言った時、なぜ売らなかったの？」望月あかりは尋ねた。彼はずっとこの家を守っていたのに、なぜ数ヶ月で突然売ることにしたのか。

望月紀夫は首を振って何も言わなかった。姉が彼にあの二十万円を返してくれた後、彼は一時期、姉の暮らしはまだ悪くないと思っていた。

彼は一度こっそり芸大に姉を訪ねたことがあった。しかし見たのは、姉が休暇を取り、昼は代講、夜は重労働をし、路上で寝ていた姿だった。

彼が横浜市に残れば姉の足手まといになるだけだった。彼は一人で足を引きずって故郷に帰り、この家に住めば住むほど心が痛んだ。

後になると、彼は一人でここで夜を過ごすことさえ怖くなった。

この家の存在する意味は何だろう？姉を苦しめて生きていくためなのか？

「試験が終わって、成績も悪くなかったんだ。誰かが百万円で家を買いたいと言ってきて。値段も妥当だと思ったから、売ることにしたんだ。」望月紀夫は言った。「姉さん、家がなくなっても、僕たちはゆっくりお金を貯めて、また買えばいい。父さんと母さんがいなくなって、僕には姉さんしか家族がいない。これからは姉さんがどこに行くのか、僕もそこについていきます。」

「姉さん、家はなくなっても、僕たちの家族はまだ存在しています。」

家族。望月あかりは山田進と別れた後、まさかこの言葉をまた聞けるとは思わなかった。

望月あかりも止めなかった。「あなたの判断に任せるわ。」