帰り道で、山田進が昔のことを話すのを聞いて、望月あかりは初めて斉藤玲人と木村清香が幼なじみだったことを知った。
「あの頃は二人の仲が険悪だったんだ。土井家は木村清香との結婚に猛反対で、二人は中学から大学まで付き合い続けたけど、土井くんの母親が自殺しそうになって、やっと別れたんだ。もし別れてなかったら、今頃子供も大きくなってたかもね」山田進は少し飲み過ぎて、帰ってから頭が痛いと言って望月あかりに頭をマッサージしてもらいながら、土井くんと木村清香のことを細々と話した。
「どうして土井くんのお母さんは反対したの?木村家だって権力があるのに、むしろ良い組み合わせじゃない?」望月あかりには理解できなかった。土井くんと木村清香は相思相愛なのに、家族の政略結婚の悲劇を避けられるはずなのに。それに土井くんの母親はあんなに優しそうな人なのに、暴れそうな人には見えなかった。
彼女の印象では、暴れる女性というのは望月紀夫の奥さんや林元紀の母親のような、見識が浅く、盲目的な自尊心の強い人たちだけだった。
山田進は首を振って、ため息をついた。「あの年、木村清香の父親が愛人を作って、その女が妊娠して家に押しかけてきて、正妻の座を要求したんだ。木村清香はまだ十歳にも満たなかったけど、両親が混乱している隙に、こっそり台所からナイフを持ち出して、その愛人を刺したんだ。その後、土井家は木村家との付き合いは続けたけど、木村清香との結婚だけは認めなかった。」
望月あかりは笑いたくなった。そんな理由で木村清香を拒否するなんて、自分の息子が将来浮気するのを心配して、木村清香にナイフで刺されるのを恐れているだけじゃないの?
人って本当に滑稽だ。自分の息子がクズ男になることを前提にしている。
「土井くんのお母さんは表向きの理由で、木村家は土井家全員が反対していることを知っていたし、木村清香のお母さんにもプライドがあったから、木村清香に土井くんとの関係を終わらせるように言ったんだ。」
この点については望月あかりも理解できた。自分の娘が何も悪いことをしていないのに、相手に嫌われるなんて、誰だって我慢できないだろう。