第115章 追跡

望月あかりはトイレに行かず、会場の外を散歩しただけだった。五分ほどで戻ってきたとき、森はるかは彼女の隣の席にはもういなかった。

その席はある財界の大物のものだった。望月あかりは名簿を見たばかりで、森はるかは「彼氏」という立場でその席に座っていたはずだが、今彼女を追い出せたのは、山田夫人としての地位があってこそだった。

どんなに愛されている花でも、正室の前では頭を下げなければならない。

突然、宮廷ドラマのような優越感を感じた。

望月あかりは胸を張って席に戻り、オークションを見守った。競売品は様々で、望月あかりの番は後半になっていた。これが会場初の絵画で、彼女も初めて公の場で絵を売ることになり、少し緊張していた。特に気に入っている作品を選んで出品した。

司会者は山田夫人の自筆画として紹介し、この作品の収益は山田夫人個人の名義で、貧困地域の小学校の給食改善のために寄付されると説明した。