望月紀夫は知らせを受け、訓練基地から病院に駆けつけた。望月あかりはまだ病室にいて、点滴を受けながら意識不明の状態だった。
山田進はベッドの横に座り、望月あかりのもう一方の手を握っていた。山田お父さんと山田おかあさんは医者と話をしていた。
「姉さんはどうですか?」望月紀夫は医者に尋ねた。その家族の存在など目に入っていなかった。
ここは私立病院で、医者は山田家の方々の指示しか聞かない。さっき既に山田家の人々に望月あかりの状態を説明したので、もう一度は言わないだろう。
「山田さん、山田夫人、私は一旦外で専門家と相談してきます。山田夫人が目を覚ましたらお呼びください」医者はそう言って立ち去った。
「姉さんはどうなんだ?聞いてるんだ、どうなんだ?!」望月紀夫は山田進に詰め寄った。彼は訓練中で、ネットで山田進の浮気騒動を知り、姉に電話で様子を聞こうとしたところ、山田進が電話に出て望月あかりが入院したと告げられたのだ。
「静かにして。あなたのお姉さんは眠っているだけよ」山田おかあさんは度量が大きく、望月紀夫に静かにするよう促し、彼の無礼な態度など気にも留めなかった。
望月紀夫は望月あかりの元へ行った。彼女は穏やかな呼吸をし、手には点滴が刺さっており、安らかに眠っていた。
「貧血気味で、この数日休めていなかったので倒れたんです」山田進は小声で言った。
「本当に大丈夫なのか?」望月紀夫は再び尋ねた。
「大丈夫です。ただ妊娠していて、貧血と疲れが重なっただけです。起こさないように、もう少し寝かせましょう」山田進は望月あかりを起こさないよう、静かに話した。
望月紀夫は眠る望月あかりを見つめた。新しい甥が来ることへの喜びなど全く感じられなかった。彼女は痩せすぎていて、健康的とは言えないほどだった。それなのに今妊娠しているのに、山田家の人々は彼女を大切にせず、他の女に彼女を傷つけさせている。
「外に出ろ。話がある」ネット上の騒動を思い出し、望月紀夫は立ち上がって山田進に言った。
山田進は立ち上がり、山田おかあさんに望月あかりを頼んで、望月紀夫について外へ出た。
ドアを閉めるや否や、望月紀夫は訓練着から分厚い写真の束を取り出し、容赦なく山田進の顔に投げつけ、続けて腹を蹴り上げた。
「てめえ!姉さんを苦しめやがって!」