第168章・早産

言い終わると「ぺっ」と唾を吐いた。周りの人たちが笑い出し、その中には森結衣も含まれていた。

木村平助は腹を抱えて、涙が出るほど笑った。「進兄さん、それはあなたが間違っていますよ。若い女の子があなたについて料理を習っているのに、少しは女性に優しくしてあげるべきでしょう。どうして『腐った水』なんて言い方をするんですか?」

「そうですよ、山田坊ちゃん。まさか、あなたは腐った水を飲んだことがあるんですか?」

動画は11秒だけだった。最初の8秒は山田進が彼女の作ったスープを嫌がる場面で、残りの5秒は暗い路地裏で、たくましい影が地面に倒れている人に暴行を加えている様子だった。その攻撃は致命的で、明らかにその人の命を狙っていた。

その影は望月紀夫でもなく、あの逃亡犯でもなかった。

たった11秒で、望月あかりと山田進の何年もの感情が粉々に砕け散った。

偽りだった。すべてが偽りだった。

彼は彼女の作った料理が本当は好きではなく、スープを腐った水のように嫌っていた。あの頃、彼女は料理が全くできず、レシピを見ながら彼の好みの味を探り当てようとしていた。

しかし今、真心を込めた思いがこのような報いを受けるとは。

腐った水は下水道に流すべきだった。望月あかりは山田進に満足してもらおうと、何度もスープを作り直していた。

そして望月紀夫のことも、すべてが嘘だった。彼女が信じていたすべての感情が嘘だったのだ!山田進は昨日若葉いわおが彼を訪ねてきたことを知っていて、わざと夜に出かけ、南三丁目で若葉いわおを殴り倒し、すべての証拠を奪い取ったのだ!

斉藤玲人は木村家に汚い事があると言っていた。山田進もそれに関わっており、望月紀夫は彼らに虐げられるのを避けられなかったのだ!

望月あかりは震える手で携帯電話を取り、斉藤玲人に電話をかけた。相手はすぐに出た。

「おや、今日は親子揃って電話をくれるなんて、私のことが恋しくなったのかな?ん?」斉藤玲人は機嫌が良く、彼女に対する話し方も大胆で軽薄になっていた。

「……斉藤さん、あなたは私を騙さないですよね?」望月あかりは震える声で、やっと冷静さを取り戻して言った。「今、はっきりとした答えが欲しいんです!」