「この方は……?」望月あかりは困惑し、名前が思い出せなかった。『戦国』はすでにしばらく撮影が始まっていたので、彼女がこのような態度を取れるということは、かなり重要な役どころに違いない。
例えば、主演女優?それとも後ろ盾がある?
望月あかりは謙虚に受け止め、「おっしゃる通りです。すぐに帰ります」と言った。
契約はまだ結んでいないので、描かないと言えば描かなくても良いのだが、斉藤玲人の意向では彼女は公式指定なので、描かないとなると制作側は困るだろう。
土井あきらが出てきて、望月あかりが主演女優と笑顔で話しているのを見て、後ろにいる中村正博をあかりの前に連れてきて、「あかりさん、全ての誤解が解けました」と言った。
女優は総監督を見るとすぐに態度を低くした。
望月あかりはその作り笑いを見るのも嫌で、中村正博に手を差し出し、「中村監督、こんにちは。今回は一緒にお仕事ができなくて残念です。あなたの女優さんが私を気に入らないようなので、これで失礼します」と言った。