第169章・提訴_2

「明日の練習の時に、赤ちゃんを見に行きませんか？」斉藤玲人は彼女を褒めながら、赤ちゃんを見に行くことを提案した。「もう目を開けられるようになったんですよ。まだお母さんに会ってないんです。」

望月あかりはその子供のことを思い出すと、山田進のことも思い出し、嫌悪感が湧き上がってきた。首を振って断った。「行きたくありません。彼に関係のある人には会いたくないんです。」

彼とは、山田進のことだ。

斉藤玲人はそれを理解し、さらに尋ねた。「これからどうするつもりですか？」

子供という絆がある以上、以前のように簡単に離婚とは言えない状況だ。離婚後、子供はどうなるのか？

望月あかりは決意を固め、目を閉じて言った。「離婚します。離婚したいんです。もう彼に会いたくない。私のこれまでの人生を粉々にして、腐った水のように貶めた彼に、もう会いたくないんです...」

彼は恐ろしい人だった。彼女の前では弱々しく無能な振りをしながら、陰では残酷な行為を重ねていた。

自分が何を間違えたのか、まだ分からなかった。たかがブレスレット一つで、こんな不公平な扱いを受けなければならないのか？

彼女は彼を裏切っていない。ただ恋愛をしただけなのに、人としても幽霊としても中途半端な状態に追い込まれた。

「離婚したいんです。斉藤さん、私の離婚を手伝ってください。もう彼とは何の関係も持ちたくありません！」財産を狙っているなどと言われ、道化のように演じさせられた。山田進なんて、彼女が策を巡らす価値もない人間だった。

「分かりました。離婚しましょう。私があなたを海外に送り出します。赤ちゃんはどうしますか？望月さん、一緒に連れて行きませんか？私が育てます。私が認知します。どうですか？」斉藤玲人も子供の行く末を気にかけていた。彼にとって、この子は望月あかりの血を引いているのだから、当然引き取って育てたいと思っていた。

子供を引き取れば、望月あかりは彼の好意を覚えてくれるだろうし、彼女を得るのにも有利になる。

「今は法律で保護されているから、離婚後は子供をあなたが引き取れます。」彼女が望むなら、子供を手に入れる手助けができる。

「私は彼を要りません。彼に関係のあるものは何も要りません。」無責任だと言われようと、母親失格だと言われようと、自分さえ守れない身で、どうやって子供を守れるというのか？