黎川 しずく

望月あかりは、かつて親しかった人が、こんなにも深く彼女を欺くとは思ってもみなかった。

彼の借金を返済し、学費を出し、3つのアルバイトを掛け持ちしていたのに、偶然にも彼が裕福な家庭の出身で、市内トップクラスの御曹司だと知ることになった。

彼らは田舎の孤児である彼女が、お坊ちゃまに玩具のように弄ばれる様子を笑っていた。

この陳腐な物語で、山田進は権力と地位を持ち、望月あかりは逆らうことも、立ち向かうこともできず、諦めるしかなかった。

しかし、手放した後、今度は山田進が手放さず、望月あかりの弱みを握り、彼女は強制的に結婚させられた。

彼が更生して、自分の支えになってくれるかもしれないと思ったが、さらに深い嘘を知り、望月あかりは結婚指輪を置いて離婚した。

……

結婚指輪の下に隠されていた離婚協議書は、ずっと金庫に保管されていた。山田進が画壇の新星となった望月あかりが他人を抱きしめているのを見るまで。

そのとき彼は初めて気づいた、彼女が自分を許していなかったことを。

世の中に己の心で人を推し量ることなどない、ただ自分がされたことを相手に返すだけだ。

前半は女主人公が身動きが取れず、男主人公は自惚れて愛を盾に人を欺く。

後半は女主人公が逆転し、男主人公は愚か者で、「御曹司」という身分はあれど、支配者としての威厳はない。

女性視点、苦手な方はご注意ください。

愛の期限切れ

「明日の練習の時に、赤ちゃんを見に行きませんか？」斉藤玲人は彼女を褒めながら、赤ちゃんを見に行くことを提案した。「もう目を開けられるようになったんですよ。まだお母さんに会ってないんです。」


望月あかりはその子供のことを思い出すと、山田進のことも思い出し、嫌悪感が湧き上がってきた。首を振って断った。「行きたくありません。彼に関係のある人には会いたくないんです。」


斉藤玲人はそれを理解し、さらに尋ねた。「これからどうするつもりですか？」


子供という絆がある以上、以前のように簡単に離婚とは言えない状況だ。離婚後、子供はどうなるのか？


望月あかりは決意を固め、目を閉じて言った。「離婚します。離婚したいんです。もう彼に会いたくない。私のこれまでの人生を粉々にして、腐った水のように貶めた彼に、もう会いたくないんです...」


第169章・提訴_2