藤田深志はただ何気なく話していただけで、彼女がなぜそんな反応をするのか理解できなかった。
「彼女が撮った動画を見たことがあるけど、それがどうしたの?」
柏木正は登録を済ませた後、そのヨガスタジオのインフルエンサー講師が撮った動画を彼の携帯に送ってきた。見ないわけにはいかなかった。
鈴木之恵はまだ警戒を解いておらず、緊張して言葉を詰まらせながら、
「あ、あの人を知ってるの?」
藤田深志は彼女がまた嫉妬しているのだと思い、いらだたしげに言った。
「何を考えているんだ。俺がそんな軽い男だと思うのか。女を見かけただけで知り合いになるとでも?」
彼がそう言うと、鈴木之恵の宙づりになっていた心が胸に落ち着いた。
「知らないなら良かった。」
彼女は呟いたが、藤田深志の耳には一言も聞き逃さずに入った。