否定できないことだが、ベッドの中で、彼は彼女を喜ばせていた。
鈴木之恵は黙り込み、先ほどの場所にもう一度キスをした。
「手で、手でして。」
彼女はなだめるような口調で言った。
彼が毎回彼女の全身にキスをしたがるにもかかわらず、彼女は口でするのを本当に受け入れられなかった。
藤田深志は我慢できないほど辛かったが、彼女の提案を渋々受け入れた。
朝のこの一騒動で、二人とも遅刻することになった。
鈴木之恵は急いで薄化粧をし、朝食を食べる時間もなく、それでも9時前の打刻に間に合わなかった。彼は良かった、好きな時間に来られる、結局彼は社長だから誰も何も言えない。
鈴木之恵がデザイン部に足を踏み入れると、山田結城が白い目で迎えた。
「鈴木之恵、社長夫人の方が早く来てたわよ!」
鈴木之恵は彼女の言う社長夫人が誰を指しているのか当然知っていた。
その時、秋山奈緒は視界の良い自分の席に座り、険しい目つきでこちらを見ていた。
鈴木之恵は投げやりな口調で、「寝坊しちゃって、給料カットでいいわ。」
山田結城は目を回して、「明日はデザイン部の年に一度の作品コンペよ。全員参加必須で、審査に通れば昇給、落ちたら首よ。急いで準備しなさい、明日以降あなたに会えるかどうかわからないわね。」
鈴木之恵は席に座り、ゆっくりとパソコンを立ち上げた。
明日のコンペを今日になって知らされるなんて、明らかに彼女を困らせようとしているのは明白だった。山田結城の「首」という言葉は彼女にとって魅力的な条件だったが、ここにいたくないのは本当だけど、追い出されるような形で辞めたくはなかった。
この人たちは彼女を排除して追い出そうとしているけど、彼女はあえてその思い通りにはさせない。
今の彼女の心理は、彼女たちが自分を見下しているのに何もできない様子を見てやりたいというものだった。
山田結城は尻を振りながら遠ざかった。
鈴木之恵は仕事用メールを開くと、朝方に届いた新着メールがあり、まさに明日の作品コンペについての通知だった。
彼女は隣で仕事に没頭している時田言美に尋ねた。
「明日のコンペの準備はできてる?」
時田言美は両手を胸の前で合わせ、敬虔に祈るように、「一週間前から準備してるわ。藤田グループに残れるかどうかは明日次第、仏様お願い。」
「通知はいつ受け取ったの?」